図書館の児童書コーナーで大人が子どもたちに読み聞かせている場面

この記事の要点

自分の作品を守ることと、他人の表現を使う条件の確認を合わせて進めます。古い物語、依頼した絵、子どもの写真も一律に自由とは考えず、使う範囲を決め、必要な了解を記録しましょう。

著作権は原則として作品を創作した人に生まれる

童話や児童文学の著作権は、原則として創作した人に生まれます。出版や登録をしなければ発生しない、というものではありません。ただし、保護されるのは創作的な表現です。「森で迷子になる話」といった題材やアイデアだけを、自分だけのものにできるとは限りません。

原稿の途中版、完成日が分かる記録、挿絵の依頼内容を残しておくと、制作の経緯を説明しやすくなります。出版会社や公募の契約では、著作権を譲るのか、一定の利用を認めるのかを読みます。書いた本人でも、契約後の利用に約束がある場合があります。

本記事は、日本での出版を考えるための一般的な確認点です。個々の作品が自由に使えるかは、原作や利用方法などによって異なります。判断に迷う場合は出版先や権利者へ相談し、必要に応じて著作権に詳しい専門家へ確認してください。

昔話や民話は古い題材と現代の再話を分けて考える

再話とは、伝わってきた物語を、自分の言葉で語り直すことです。原典が古い昔話や民話でも、特定の再話本の文章、独自に加えた場面、翻訳、挿絵などには、それぞれ権利がある場合があります。原典の扱いと、参考にした本の扱いは分けます。

市販の再話本を見ながら、語尾や登場人物の名前だけ変えても、自分だけの表現になったとはいえません。どの資料を読み、何が伝承の内容で、どこからが自分の創作かを記録します。外国の作品は原作の権利も確認し、古い作品だから自由と決めつけないようにします。

例:「地域で聞いた話を基にした創作童話」と説明する場合も、聞いた相手、記録した資料、引用する箇所を控えます。地元の資料集から文章を使うなら、その資料の権利と使い方を確認します。出典を書くだけで、長い転載や書き換えが認められるわけではありません。

翻訳では既存の日本語版との関係も確認する

原作と翻訳は、別々に権利の確認が必要です。原作を自分で読んで訳す場合と、既存の日本語訳を基に書き換える場合は同じではありません。原作の保護が終わっていても、新しい翻訳の表現まで自由になるとは限りません。

『新訳 ウィニー・ザ・プー&ハウス・アト・プー・コーナー』の著者、久保 芳孝さんは、次のように振り返っています。

問題だったのは日本で出版されている翻訳本との兼ね合いでした。

出典:お手軽出版ドットコム お客様の声(同書の著者の声)。原文では、担当者から助言を受け、納得するまでやり取りしたことも述べています。これは既存の翻訳との関係を相談した個別の経験であり、別の作品でも許諾が不要だと示す事例ではありません。

歌詞や既存キャラクターは物語の飾りとして借りない

主人公が歌う場面に好きな歌詞を載せたり、有名なキャラクターを登場させたりしたいことがあります。短い歌詞、子どもが知っている絵、無料で配る本であっても、自由に使えるとは判断しないようにします。

批評などのための引用には条件があります。出典表示だけで認められるわけではなく、物語の雰囲気を出すために歌詞や絵を飾る使い方が引用に当たるとは限りません。必要なら権利者や管理先へ用途を説明して確認します。

たとえば「主人公が元気を出して歌う」と伝えたいなら、自分で短い歌を作る、歌詞を書かずに歌った様子を描く方法があります。既存のキャラクターも、名前だけ変えて特徴的な姿や設定を写すのではなく、自分の物語に合う人物から考えます。

依頼した挿絵は権利の帰属と使える範囲を契約で決める

イラスト代を払ったことや原画を受け取ったことだけで、著作権がすべて著者へ移るとは限りません。絵を描く人と、権利を誰が持つか、どの用途を認めるかを契約で決めます。家族や知人に描いてもらう場合も、後で困らないよう確認を残します。

確認する項目具体的に相談する内容
権利の帰属著作権を画家が持つか、譲渡するか
掲載する場所本文、表紙、帯、販売案内やウェブで使えるか
後からの利用増刷、電子版、読み聞かせ動画にも使えるか
加工と表示切り抜き、色変更、文字の重ね方、画家名の表記
納品と修正原画やデータの扱い、修正の範囲と費用

「この本に使ってよい」という約束だけでは、宣伝用の画像や動画まで含むか分からない場合があります。使い方を具体的に示し、合意した記録を保管します。制作の頼み方は挿絵の記事で確認してください。

実在の子どもの写真や名前は本人と保護者に説明する

子や孫をモデルにした物語でも、実名、学校名、顔写真、私的な出来事を公表する範囲を考えます。写真の掲載には、撮影者の権利と、写っている人の肖像やプライバシーへの配慮があります。写真を持っていることだけで掲載を決めないようにします。

子ども本人に年齢に合う言葉で説明し、本人と保護者の了解を得ます。「写真を使ってよいか」だけでなく、実際の写真と説明文、配布先、販売の有無を示します。保護者の了解があっても、子どもが嫌がる写真や失敗談を無理に載せないことが大切です。

例:家族だけに渡す記念の本から、学校への寄贈や一般販売へ変更する場合は、その範囲まで了解されているかを再確認します。仮名にしても、学校や出来事の組み合わせで本人が分かることがあります。迷う細部は省く方法も検討しましょう。

AIの文や絵は利用条件と応募先の要項を別々に読む

AIで作った文や絵も、自由に使える、必ず自分の著作権が生まれる、と一律には判断できません。人が創作にどう関わったか、既存作品との関係など、個別の確認が必要です。利用したサービスの規約と、書籍や販売に使う条件も確かめます。

出力に既存の文章やキャラクターに似た表現がないかを点検し、生成したものと自分が修正した内容を記録します。特定作品を再現するように作らせた画像などを、そのまま挿絵に採用しないようにします。

公募では、AIを使った作品を不可とする場合があります。文章や絵の生成と、校正等の補助を分ける要項もあり、扱いは賞や回次で異なります。応募原稿とAIの注意点を確認し、要項は毎回変わるため、必ず応募する回の公式案内を読んでください。出版できる条件と、公募に出せる条件は別に確認しましょう。

出典・参考

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