この記事の要点
子ども向けの文章は、誰が何をしたかが追えることを土台にします。短く切るだけでなく、語り手の視点と文体を揃え、声に出して言葉のつながりや間を確かめましょう。
人称は、誰の目と声で物語を伝えるかで選びます
童話や児童文学を書く大人は、まず語り手を決めると文章を整えやすくなります。一人称は「わたし」「ぼく」が語る形です。「ぼくは箱を開けたくなかった」と気持ちに近づけますが、本人が見聞きしていないことを当然のようには語れません。
三人称は「ミナは箱を見つめました」のように、人物の外から語る形です。ただし三人称でも、主人公が気づくものを中心に描くことができます。短い場面で次々と別の人物の心の中へ移ると、誰の気持ちを読んでいるのか分かりにくくなります。
例えば「ぼくは怖かった。ユウも怖いと思った」は、一人称の語り手に他人の内心が分かる書き方です。「ユウは、ぼくの袖をぎゅっとつかんだ」と見える動作にすると、読者が気持ちを想像できます。作者が知っていることと、語り手が知っていることを分けてみましょう。
です・ます体と、だ・である体は語りの調子で決めます
です・ます体は「森に小さな家がありました」、だ・である体を含む常体は「森に小さな家があった」という形です。前者は聞き手に語りかける調子、後者は場面を近くで追う調子などに使えますが、年齢だけでどちらかに決まるものではありません。
常体を選んでも、すべてを堅い「である」で終える必要はありません。「あった」「走った」「雨だった」と、作品の声に合う語尾を選びます。地の文の基調を決めたうえで、会話では人物ごとの言葉遣いを使えます。
乱暴な言葉を使う人物も描けます。ただ、強い言葉を重ねるだけでは性格が単調になります。言いかけてやめる、聞かれたことに答えない、といった振る舞いでも怒りや不安を表せます。読み聞かせる大人が口にする言葉としても確かめてください。
一文は、動作と説明を詰め込みすぎない長さにします
一文の適切な字数は、年齢や場面によって変わります。数字の上限を置くより、主語を探し直す文や、途中の説明が長くて動作を忘れる文を見つけます。まず動作を示し、理由や背景を次の文へ分けると整理できます。
以下はすべて自作の書き換え例です。短くするだけでなく、何が読みづらさの原因かを見てください。
| 見直す点 | 書き換え前 | 書き換え後 |
|---|---|---|
| 動作の詰め込み | ミナは雨が降ってきたので傘を開こうとしたけれど風が強くて開けませんでした。 | 雨が降ってきました。ミナは傘を開こうとしました。でも、強い風に押し戻されます。 |
| 抽象的な言葉 | ぼくは不安を感じた。 | ぼくは、ドアの前で足を止めた。 |
| 誰の動作か | ミナはユウに手を振りました。走り出しました。 | ミナが手を振ると、ユウが走り出しました。 |
| 重なる否定 | 行かないわけにはいきません。 | 行くしかありません。 |
| 説明を背負う会話 | 「昨日なくした赤い傘を探しているんだね」 | 「まだ見つからない?」ユウは傘立てをのぞきました。 |
動作に直すと意味が変わる場合もあります。「足を止める」だけでは驚きとも読めるので、前後の場面で不安が伝わるか確かめます。また、短文ばかりを並べると単調になるため、落ち着いて景色を見る場面では少し長い文も使えます。
会話と地の文は、伝える役割を分けます
会話は人物同士の働きかけを見せ、地の文は場所、動作、沈黙などを支えます。会話の比率を先に決める必要はありません。「だめ」「どうして」「だって」と会話だけが続いて状況が見えないときは、誰が何をしているかを添えます。
例えば「返して」「いやだ」の間に、「ユウは箱を背中に隠しました」と入れると、読者は位置関係を思い浮かべられます。反対に、会話の直後に同じ意味の説明を重ねていたら、どちらかを減らしてみます。
人物がすでに知っている事情を、不自然に説明し合っていないかも読み直します。読者に必要な情報は、物や行動から少しずつ示す方法があります。場面が変わったときは、場所や時間の手がかりを地の文に置くと迷いにくくなります。
擬音語・擬態語とくり返しは、変化を伝えるために使います
擬音語は「ざあざあ」のような音を、擬態語は「そわそわ」のような様子を表す言葉です。具体的な音や動きを短く伝えられますが、珍しい言葉を増やしすぎると、聞き手が意味をつかむ前に話が進んでしまいます。
「ぽつ、ぽつ。やがて、ざあっ」と雨音を変えると、雨が強くなる様子を示せます。「とん、とん。返事はありません」を繰り返し、最後だけ「とん、とん。中から、とん」と変えると、待っていた出来事が起きたと伝わります。
くり返しは、幼い読者が次の言葉を待つ楽しみにもつながります。同じ音を足すだけでなく、最後に何が変わるのかを考えます。作品全体の出来事とのつながりは物語の構成で確かめられます。
読み聞かせのリズムは、説明を足さず音読して確かめます
書いた文を声に出し、息が続かない場所、似た音が続いてつまずく場所に印を付けます。書き手が頭の中で補っている説明を、その場で足さずに読みます。聞くだけで誰の動作か分かるかが、見直す目安になります。
大げさな声色を使わないと人物を区別できない場合は、会話の前後に名前や動作を添えます。読点を増やしても直らない文は、語順を変えるか、文を分けてみます。間を楽しむ場面と、勢いよく進めたい場面の違いも耳で確かめましょう。
語り口を整えたら漢字とルビで目からの読みやすさを確認し、試し読みと推敲で想定する読者の反応を見ます。難しい題材の語り方はテーマと表現で扱います。