この記事の要点
推敲では、まず物語のつながりを直し、その後で文章と表記を整えます。子どもの反応は正解を聞き出すためではなく、伝わり方を知る手がかりです。校正の段階でも著者自身の確認が必要です。
書き終えた原稿は、時間を置いて筋から読み直します
童話を書いた直後は、書かなかった事情まで頭の中で補いながら読んでしまいます。いったん原稿から離れ、物語の細部を少し忘れた頃に読み直します。置く期間を一律に決めず、締切から見直しの時間を確保してください。
最初は誤字を探すより、主人公が何を望み、どこで困り、何を選んだかを追います。例えば「迷子なのに、突然家の場所が分かった」なら、手がかりを見つける場面が足りないかもしれません。結末の行動につながらない場面も、この段階で見直します。
修正前の原稿は控えを残し、構成を直す作業と語句を直す作業を分けます。削る予定の場面を細かく磨く前に、物語の骨組みを確かめると、直す順番が見えます。気になる点を一覧にして、物語全体に関わるものから取りかかりましょう。
音読では、つまずく言葉と補ってしまう説明を探します
声に出して読むと、目だけでは流していた長い文や、似た音の名前に気づけます。途中で息を継ぎたくなった場所、誰のせりふか迷った場所に印を付けます。読み聞かせの予定がなくても、文のつながりを確かめる方法として使えます。
読んでいる途中で「これは昨日のことなのですが」と説明を足したくなったら、本文に時間の手がかりがないかもしれません。書き手だけが知る事情を口で補わず、原稿のどこを直すかメモします。別の大人に読んでもらうと、作者の読み癖に頼っていた箇所も見つけやすくなります。
自作の例なら、「ミナはユウの姉に渡した箱を持っていた」を「ミナは箱を持っていました。ユウのお姉さんに渡す箱です」と分けられます。ただし、元の文ではすでに渡したとも読めるため、先に出来事の順番を決めます。短くする前に、何を伝えたい文なのかを確かめることが大切です。
試し読みは、想定する年齢と読み方を合わせます
低学年向けなら低学年の子、幼年向けならその時期の子に協力してもらいます。ひとり読みの本を検討するなら、自分で読んだ反応と、大人が読んだ反応を分けて見ます。読み聞かせで楽しめても、文字や語の難しさが残っている場合があるからです。
身近な子と保護者に目的を伝え、協力できる範囲で読んでもらいます。園や学校で行うときは担当者にも相談します。疲れている、題材がつらい、読みたくないといった様子があれば、途中でやめられるようにしてください。反応のよしあしを、子どもの能力の評価に結び付けないようにします。
読みながらページを戻した、挿絵を長く見た、言葉を尋ねた、続きを急いだ、といった行動を記録します。黙った理由は分からないこともあるため、「退屈した」と決めつけず、「この場面で読むのが止まった」と観察した事実を残します。
感想は、正解を示さず具体的な場面から聞きます
「面白かった?」だけでは、書き手に気を遣って答える子もいます。感想を言わずに終えてもかまわないと伝え、覚えている場面から話してもらいます。次は聞き方の例です。
| 避けたい誘導 | 聞き方の例 | 見直しの手がかり |
|---|---|---|
| ミナは勇気があったでしょう? | ミナのことで、覚えているところはある? | 主人公の行動がどう残ったか |
| ここは悲しい場面だよね? | ここを読んで、どんな感じがした? | 作者の意図と受け止め方の違い |
| 難しい言葉はなかった? | 聞いてみたい言葉や、よく分からないところはある? | 語彙や説明が足りない場所 |
| 最後の意味は分かった? | 最後のあと、どうなると思う? | 結末から想像できたこと |
答えを訂正する前に、そう感じた場面を確かめます。出来事を取り違えたなら、人物名や場面の順番を点検します。感想が違うだけなら、余韻として残せる場合もあります。身近な子の反応は作品を直す手がかりですが、同じ年齢のすべての子を代表するものではありません。
大人の目線を外し、子どもが見聞きできる場面に戻します
「その経験は将来きっと役に立つ」と大人が説明する場面が続くと、子どもの現在の気持ちが後ろへ下がってしまいます。主人公はいま何を見て、何に困っているのかを確かめ、その場で分かる動作や言葉へ戻します。
例えば「友達の事情を理解して寛大になった」を、「ミナは言いかけた言葉をのみこみました。『話してみて』」と直せば、気持ちを聞こうとする行動を示せます。前後に迷いの場面があれば、説明を減らしても変化が伝わるかもしれません。
大人の登場人物が助けることはあっても、すべての意味を説明して終えていないか見ます。テーマと表現で怖さや教訓の扱いを見直し、文章の書き方で語り手の視点を揃えます。
添削と校正を分け、最後に表記とルビを揃えます
添削は、構成や内容、表現について助言を受けて直すことです。校正は、誤字・脱字、表記、組まれた紙面が原稿と合っているかなどを確認する作業です。依頼先によって範囲が異なるので、「主人公の動機を相談したい」のか「表記を確認したい」のかを伝えます。
| 確認する項目 | 原稿内の例 | 決めること |
|---|---|---|
| 名前・呼び名 | ミナ/みな | 地の文と会話の使い分けを含めて揃える |
| ひらがな・漢字 | ともだち/友達 | 読者に合わせた表記を決める |
| 言葉の形 | ひとつ/一つ | 作品内の基準を作る |
| ルビ | 同じ名前の読みが違う | 読みと、付ける箇所の基準を確認する |
| 句読点・括弧 | 閉じ括弧の抜け | 会話の始まりと終わりを確認する |
検索で候補を拾い、一括置換の前に文脈を見ます。人物の話し方として意図的に変えた表記まで揃える必要はありません。漢字とルビで決めた方針を、目次や挿絵の説明にも適用します。
お手軽出版ドットコムの案内では、本文の著者校正は何度でも無料(紙の校正刷りは有料)。これは著者が確認用データを見て行う本文の著者校正についての条件です。内容への添削や専門家による校正まで、すべて無料という意味ではありません。出版の流れを参照し、修正後は直した箇所と前後の行、ページの移動も確かめて、印刷へ進める原稿を整えましょう。