ノートに物語の登場人物のラフを描く大人の手元

この記事の要点

主人公が何を望み、何に困り、どう行動するかをつなぐと物語の骨組みができます。構成の型は手助けとして使い、書き出しで起きた問いに、結末の行動や変化で応えます。

題材は、子どもが気になる小さな出来事から探せます

童話を書くために、珍しい経験を探し回る必要はありません。片方だけ残った手袋、雨の日に閉じた花、誰も座らない椅子など、身近なものから始められます。「もし手袋が持ち主を探しに出たら」と問いを足すと、観察が物語の種になります。

自分の子ども時代を思い出すなら、出来事と当時の気持ちを分けてメモします。「転校した」という事実の横に、「友達の輪に入る言葉が見つからなかった」と書くと、時代が変わっても描ける感情が見えてきます。実在の子どもの経験を使う場合は、その子と分かる情報を残さないかにも気を配ります。

ここからの文例は、書き方を説明するために作った架空の物語です。同じ種を使っても、読者の年齢を変えると必要な説明や展開の複雑さが変わります。まず読んでほしい相手を仮に決めておきましょう。

主人公の願いと障害を置くと、次の行動が生まれます

願いは「幸せになりたい」より、「借りた赤い傘を友達に返したい」のように、行動にできる形にします。障害は悪者でなくてもかまいません。友達とけんかした、雨で道が通れない、謝る言葉が出ない、といった困り事でも物語を動かせます。

「傘を返したい。でも友達に会うのが怖い。だから別の子に頼もうとする」というように、願い・障害・試す行動を並べます。失敗を重ねるなら、同じ出来事を繰り返すだけでなく、主人公が新しいことに気づくようにします。偶然で全部解決すると、主人公の行動が結果につながりにくくなります。

書いている途中で筋が止まったら、「いま主人公は何をしたいのか」をその場面ごとに確かめます。作者が説明したいことだけの場面なら、人物の選択へ置き換えられないか考えてみてください。

登場人物は、願い・得意なこと・困ることを組にします

子どもの主人公なら、読者に近い関心や行動範囲を持たせられます。ただし「低学年の子は皆こうする」と決めず、その子だけの癖を考えます。例えば、人前で話すのは苦手でも、虫の居場所にはすぐ気づく子なら、得意なことが困り事を解く手がかりになります。

動物を主人公にする場合は、現実の特徴と物語の約束を整理します。話すウサギでも、耳で遠くの物音に気づくなど、その動物ならではの感覚があると姿を思い浮かべやすくなります。困ったときだけ急に飛べる、といった後付けの力で解決しないようにします。

名前は声に出して呼びやすく、登場人物同士を聞き分けられるものにします。似た音の名前を並べるなら、初登場の場面や役割をはっきりさせます。大人は助言したり安全を支えたりできますが、結末の大切な決断まで引き受けると子どもの見せ場が薄れます。助けを求めることを主人公自身の選択として描く方法もあります。

短編の構成は、起承転結だけに当てはめなくてかまいません

起承転結は、始まり・展開・変化・結びを整理する型です。ただし万能ではなく、すべての話に大きな意外性を加える必要もありません。静かな発見が中心の童話を、無理に事件へ変えなくてもよいのです。

構成の例考える順番使うときの注意
起承転結状況を置く、広げる、変化させる、結ぶ「転」のためだけの唐突な出来事を足さない
三幕願いと問題を示す、試して行き詰まる、選んで決着する各部分を同じ長さにする必要はない
行きて帰りし物語日常から出発する、出会いや試練を経験する、戻る帰った主人公に何が残ったかを考える

どの型でも、場面と場面が「そして」だけでつながっていないか見ます。「失敗したので次はこうした」「知ったから考えが変わった」と、出来事の理由がつながると、短い物語でも流れを追いやすくなります。

プロットは、場面ごとの行動を箇条書きにします

プロットは、本文を書く前に作る出来事の設計図です。きれいな文章にせず、何が起きて何が変わるかを書きます。赤い傘を返す物語なら、次のように並べられます。

  • 始まり:ミナは友達の傘を返したいが、昨日のけんかが気になっている。
  • 最初の行動:黙って玄関に置こうと出かけるが、友達が外にいるのを見て隠れる。
  • 変化:友達が雨の中で濡れていると気づき、置いて帰るだけでは助けられないと迷う。
  • 選択:ミナは傘を開き、友達の方へ歩いていく。
  • 結び:言葉はまだ出ないが、傘の下で隣に立つ。

この段階で筋を読み返し、説明のためだけの人物や寄り道を減らします。会話の細部は本文を書きながら変えてかまいません。結末を先に仮置きしておくと、そこへ必要な準備が見えます。

書き出しは出来事を見せ、結末は主人公の変化で結びます

次は、狙いが伝わりにくい悪い例と、その狙いに合わせて直した例です。説明から始めることや教訓を語ることが、いつも間違いという意味ではありません。

箇所悪い例直した例
書き出しミナは内気で、友達と仲直りしたい女の子でした。玄関には、返せないままの赤い傘が立っていました。
結末ミナは勇気と友情が大切だと分かりました。ミナは傘を友達の方へ傾けました。「いっしょに帰ろう」

書き出しでは、誰の話かを早めに知らせつつ、続きが気になる物や出来事を置きます。結末では、冒頭でできなかった行動をできるようにする、同じ物を違う気持ちで見る、といった変化を使えます。説明を足さなくても変化が伝わるか、最初と最後を続けて読んでみてください。

骨組みができたら子ども向けの文章で語り口を整えます。書き終えた後は推敲の進め方で、願いと結末がつながっているかを確かめます。

原稿を読みやすく整える

漢字と分量を確かめ、読者に合った本文を考えましょう。